錦鯉タッタR(yamadarei)が演劇から考える

錦鯉タッタの山田零が、演劇から考えるブログ

TAGTAS結成プロジェクト『百年の<大逆>』開催にあたっての文章01。

2008年、シアターという形式を共有しようとする諸個人が、互いの領域を横断しながら協働していく関係を持とうとする場としてTAGTAS(タグタス)は発足しました。過去と現在とが織りなす複数の歴史を、円卓会議、リーディングパフォーマンス、舞台上演、という多様なアプロ−チによって紐解きながら、私たちが生きている現在の問題を観客と共に考えていきます。


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■TAGTAS結成プロジェクト『百年の<大逆>』開催にあたって

 

 20世紀を経て新たな時代に立ち会うとき、舞台芸術はどのような社会的役割を持つのでしょうか。未来の舞台芸術を多面的に展望するためには、前世紀そして「近代」の舞台芸術を、その発生の時点から批判的にとらえ直す必要があります。

 シアター(舞台・劇場)とは、市民が自律的によりよい生活と社会を夢みる場所であり、またその夢を共同で作っていくなかで、<共に>考え、議論していくような社会的共通資本のひとつです。演劇や舞踊と思想や研究とがまだ分化されていなかったころの「シアター」という場所をひとつのモデルとしながら、あらためて芸術の自由と倫理、そしてその潜在的可能性と限界(不可能性)を、円卓会議そして上演創作における共同作業のなかで、問うていきます。

 今回、TAGTASが大逆事件(1910-11)をモチーフとして選んだのは、それを単なるテロリズムや政治の一局面として扱うためではありません。この事件以降、諸芸術は国家や社会と独特の関係をきりむすんでいき、それは現在へと連なります。

 大逆事件を日本の舞台芸術史上の転回点として再考することで、私たちの<現在>も批判的かつ反省的に照らし出されていきます。

 プログラムは、上演『百年の<大逆>:1910-2010』(前・後篇二部作)をはじめ、劇作家・福田善之の幻の戯曲『魔女傳説』(1969)を今回あらたに改訂し現在に甦らすリーディング・パフォーマンスと作者を交えた円卓会議や、ほか二つの円卓会議、レクチャーとマニフェスト・アクション、朗読会などを予定しています。